私たちは前進しなければいけない
夫に話した。
昨年1年間の新婚生活、今年1月に不妊治療を終結し子どもを諦めたこと、子猫の死に対するショック、生き残った子猫の看病・・・とにかく疲れがたまっていること。
自分が精神的な病気になりそうで怖いこと。
指先のしびれから始まって今では脳がしびれること。
夫からは、私が早口でたくさん指示を出すときがあり、それを理解できないと。
それについては謝った。
限界を感じていま、特に飼い猫のことに係ると、感情的に伝えてしまう傾向がある。
ただ、そういう話をしているタイミングではなかったのだけど。
軸が違う。
そしていつも夫は言い訳をする。
そうやって自分を守って生きてきたのだろう。
12月に初めて夫に「あなたはアスペルガー症候群である」と伝えた時。
その時はとにかく夫を傷つけないように、
「私もアスペルター症候群については勉強中だ」
「2人でなるべくたおやかに生きていく方法を模索している」
「障害とは言っても、個性の1つと言われている」
と伝えた。
そして【カサンドラ症候群】について説明した。
「あなたがアスペルガーだと気がつかなかった頃は、カサンドラになりかけていた」
そして自分のために宣言した。
「埋まらないものをあなたに求めても、それは難しい。これからはもっと外に出て、外で発散する」
でも今回は、「個性」ではなく、「病気」と表現した。
「あなたの病気」と。
「12月にアスペルガー症候群と言われた後で、それについて調べてみたか」と問うと、調べていない。それは、まあ、そうだろう。
「ネットにいくらでも情報はあるのだから、普通は調べて自分なりに努力するのがベストだよね。困っている人は私だけではないはずだよ」と言う。
もちろんベストではあるけれど、夫にそれができるとはなから思ってはいない。
けれどこれには失望した。
「アスペルガー症候群の旦那さんを持つ奥さんが、カサンドラ症候群になるって言ったのを覚えてる?」
全く覚えていなかった。
「それ、とっても重要なことなんだよ」
そう力なく絞りだすしかできなかった。
夫は、私の心の病気を気にかけなかった。
それが、ゆるり、突き刺さる。
はたから見れば、私が厳しくて、夫が優しいのだろう。
私が口うるさい奥さん、と見えるかもしれない。
けれど。
夫の病気を理解しようと調べて実行する私。
私の病気に無関心な夫。
どちらが優しいのだろう。
もちろん、夫は優しい。
とてもとても小さな<彼の知る範囲>の中で。
「思ったような結婚生活ではなかったかもしれないけれど」
そう言う私に、そこだけはうなずく夫。
そんな時こそ無反応であればいいのに。
だから私も返す。
「それはお互い様」
それでも私は改善したい。自分のために。
心の病気になるのは怖い。
そして言う。
「普通の結婚とは違うかもしれないけれど。この結婚生活やお互いの苦労は、アスペルガー症候群の旦那さんをもつ夫婦では、よくある話だよ」
「アスペルガー症候群のパートナーを持つ多くが離婚したり別居したりしている。お互いのために距離を置くことはとても必要」
野波ツナさんの著書「旦那さんはアスペルガー」の漫画を3冊渡す。
「本は苦手だろうから、漫画なら読めるでしょ。読んでね」
嫌そうな夫。
でも、これは譲れない。
これまでは、彼の病気を彼自身にたたきつけるのを避けてきた。
彼の心が痛むのではないかと。
あれほど彼を傷つけないように言葉を探した12月。
けれど彼の心は痛んでいないのだろう。
彼はそうやって自分を守ってきたのだ。
とてもとても小さな<彼の世界>の中に閉じこもって。
でも、私たちは前進しなければいけない。
気持ちは少し、ラクになった。
しばらくは堂々と、夫と距離を置ける。