夫を障がい者だと思った日①
飼い始めた猫の死に直面したこと、もう1匹の猫をなんとか生き残らせたこと。
これは、私のなかで、決して拭い去れない影を落とした。
昨年の誕生日から、猫を飼い始めた。
1年少し前のことだ。
私の誕生日の夜。
結婚して2年目の誕生日。
夫は野球観戦の後、飲んで深夜に帰ってきた。
それが夫にとっては、猫との初対面。
私よりずいぶん早い時間、5:00には起きて会社に行く夫に、私はうんちの世話を教えた。
「起きたら猫のトイレを処理してね」
ちょうど片方の猫がうんちをしたので、目の前でやり方をしてみせた。
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翌朝。
8:00に起きて猫のトイレを見た私は愕然とした。
トイレには5~6個のうんちがあった。
狭いケージ内。
猫のトイレの砂とカリカリが散乱していた。
そしてどちらの猫が吐いたのかわからない嘔吐物があった。
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怒る気持ちはなかった。
ただひたすらショックだった。
ただでさえ、環境の変化に弱い小さなコたちが、こんな汚い場所にいたことが申し訳なく、情けなくて仕方なかった。
すぐに処理をしながら・・。
私が悪かったのかな、と思った。
猫のうんちの処理の仕方について、説明が悪かったのかな、と。
「砂に隠れているかもしれないから、砂をよけて、ほかにもないか、見てね」
これを言っていなかった。
子猫のするうんちは、砂に埋もれてはいない。
それでも、そう思った。
私が悪かったのかも知れない、と。
たった3時間の間に全て起こったことかも知れないし。
そもそも、夫に頼んだ私が悪かった。
夫の病気を理解できていなかった。
夫に頼まず、私が早く起きるべきだった。
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嘔吐物はオス猫のものだった。
その後、オス猫が何度か吐いた。
メス猫は元気にカリカリを食べるが、オス猫は食べた様子がない。
オス猫を近所の動物病院に連れて行き、回復用のフードをもらって帰った。
伝染病の可能性があるからメス猫のために隔離を・・、そう指示され、慌ててケージをもう1つ買いに行き、2匹を離した。
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会社から帰ってきた夫に聞いた?
「朝、うんちなかった?」
「気づかなかった」と、夫。
・・うーん、やっぱりうんちはなかったのかな。
「ケージの中が、カリカリとトイレの砂で散乱していて、猫が吐いていたんだけど、起きた時はどうだった?」
「気づかなかった」と夫。
え?と思った。
「気づかなかった、ってどいうこと?
見ていないってこと?」
「うん」と、夫。
悪びれた様子もない。
夫は猫のトイレを、見てもいなかったのだ。
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ものすごい後悔が襲ってきた。
内臓がドキドキした。
一晩、あんな汚い中に子猫を閉じ込めてしまった。
夫には怒らなかった。
「病気なんだ。これが病気なんだ」と絶望的に思った。
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あとからふと思うことがある。
夫はトイレを見たのかもしれない。
ウンチだけなら処理できたのかもしれない。
でも、予測していない事態が起こっていた。
それをどうすれば良いのかわからなかった。
わからなければ私を起こして聞けばいい。
けれど夫は、わからないことは、放っておく。
そして、良い人に見える夫は、案外小さな嘘をつく。
誤魔化す。
だから「見ていないのか?」の問いに頷いたのかもしれない。
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オス猫は、どんどん弱っていく。
回復食をスポイドで与えても嫌がって食べようとしない。
吐く。
排泄はオシッコすらしない。
目の前で起こる混乱のなか、死んでしまったオス猫との、2夜目を過ごした。
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次回に続きます。
↓
夫を障がい者だと思った日②